組織改編によって「第2のスタート」を切った今西は、早々に大きな案件の受注を取り付けた。その案件とは、前任者から引き継いだ溶接ロボットのリプレイス(交換)だった。
「引き継いだ時点では、まだ受注をいただいていませんでした。こういう時期なので、予算が付くかどうか、話自体がなくなる可能性もありましたね」。
提案・見積もりから受注を獲得するまでの期間は、いつも不安だと今西は言う。その間に、仕様変更などを伴うお客様との打ち合わせを何度も重ねていく。そうしたやり取りが実を結び、ようやく受注を勝ち取った時の喜びは計り知れない。受注の決め手は何だったのか、今西に尋ねてみた。
「旧機種も日立製で、そのリプレイスだったことと、これまでも弊社とお取り引きいただいていたという実績でしょうか」。
聞いたこちらが拍子抜けしそうなほど、淡々と語る今西は自分の仕事の成果を話すことに照れがあるようだ。この案件では、溶接ロボットに付随して周りを囲む安全柵の提案・見積もりも行っていたが、安全柵はお客様のグループ会社で製作することに決まった。ただ、そこにいたるまでの見積もりや仕様確認の対応が高く評価されて、溶接ロボット一式という形で横山商会から一括購入していただくことになったのだ。
「この話を先輩にしたら、『普通じゃ考えられない』と驚かれました(笑)」。
確かに、お客様にとっては、グループ会社で製作した安全柵を、わざわざ横山商会経由で購入するメリットがあるとは考えにくい。今西自身は言わないが、お客様の目に映った彼の頑張りがあったからこそ、上記のような商談が成立したのだろう。いや、そこには今西の気持ちに対する、お客様の気持ちが込められていたに違いない。
9月中旬、いよいよ溶接ロボット一式の納品日を迎えた。「無事に完了するよう、いつもヒヤヒヤものですよ」とおどける今西の表情からは、一つの仕事をやり遂げた達成感と静かな自信が滲んでいるようにも見えた。
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