コストダウンを図り利益を上げるため、羽賀は仕入れ先の開拓にも積極的に取り組んでいる。ネット上で問い合わせを行い、欲しい製品を扱っていることがわかれば、すぐ現地に赴き担当者と話をする。「わかりました。御社に売りますよ」と言ってくれるまで交渉し続けるという羽賀は、「半年間、通ったこともありますね」と平然と言ってのける。その執念というか情熱には瞠目させられる。
「子どもの頃から思っていることですが、誰からも信頼される人間になりたい。仕事上で言えば、お客様、仕入れ先、設計者、営業から『羽賀に任せたら安心だ』と言ってもらえるような人物になりたいですね」。
羽賀の話を聞くにつけ、すでに周りから厚い信頼を寄せられているように思われるのだが、彼に言わせると「いや全然、まだまだですね」ということらしい。
「まだ、設計者なり営業なり仕入れ先をうまく納得させる話術というか技量が足りなくて、上司からも『まだまだ甘い』『アシスタントをもっとうまく使え』と怒られています」。
設計者のこだわり、営業の無理難題、それらの板挟みにあって苦慮することもしばしば。例えば「お客様が1ヵ月って言ってるんだから、何とか1ヵ月で納めるのが生産管理の仕事だろ」と詰め寄られたりした場合、羽賀は「その製品は納期が3ヵ月かかりますが、これだったら1ヵ月で入ります」という代替品を見つけて提案し、どちらを選ぶのか委ねるようにしている。お互いが納得できる道を探る優れた知恵だが、その提案の仕方が「まだ下手」なのだという。
また、自身がキャリアを重ね先輩になるということは、後輩を指導する立場になるということでもある。
「やったことのない人に『こうだ、ああだ』とうまく伝えて説明するのはすごく難しい。それをクリアできれば、いろんな人たちから信頼されるんじゃないかなと思います」。
押すところは押して、引くところは引く。調整役を務める羽賀の交渉術や技量は、今後ますます向上していくに違いない。
|