これまでに手掛けた仕事の中で、ある工場のコンプレッサーを取り替えると同時に、配管も全て新品に交換した事案が印象深いという。コンプレッサーはメーカーが部品を供給する限り修理が可能で、約40年前の製品が未だ現役という工場も多い。村田がコンプレッサーと配管の入れ替えを提案した工場も30年間、同じ設備で稼働し続けていた。ある日、定期点検で調べてみると、コンプレッサーから油分を含んだエアーが吹き出し、配管を油まみれにしていた。すぐに状況を説明し、工事のスケジュールを組むことになった。
「注文をいただいたところまでは良かったのですが、まともに工事を進めれば、約1ヶ月半もかかってしまいます。その間、操業を止めずに、新たな設備に入れ替えるためにはどのような手順を踏めばよいか、本当に迷いました」
スケジュール調整には苦労したものの、試行錯誤の末に自分で工程表を作成し、業者を動かした。工場が休業の土日に機械を新設し、新しい配管の取り付けは平日に行った。
メンテナンスでは、1回目の訪問で修理箇所を確認し、見積もりを作成して、2回目に修理するパターンが多い。しかし、修理の内容によっては新品に切り替えた方がよい場合もある。特に最新の機械は省エネに対応しているものが多く、これらを導入することで年に数百万円の電気代が節約できるのだ。ランニングコストの面から、より良い提案をするのも大切な役割だ。
村田は入社当初、照明やユニットバスの施工管理や、昇降機の営業などメンテナンス以外の業務を担当していた。
「あの頃は、いつになったらメンテナンスの仕事を任せてもらえるのか、このまま営業マンのままだったらどうしようなどと、将来に漠然と不安を抱いていました」
しかし、当時の経験は現在の仕事に活きている。特に営業部門から製品に関して技術的な問い合わせの電話を受けた時は、丁寧に対応するように心掛けている。自分も営業部時代にエンジニアから親身に相談に乗ってもらったことがあるからだ。「きっとお客様の前で困っているに違いない」。現場の営業マンとその顧客を助けるために、最良の方法を提案する。
「今後も仕事を通して常に何かを学び、実力をつけていきたい。ゆくゆくは誰からも頼られる存在になりたいです」
このように語る村田の目には、将来の目標がはっきりと映っていた。寡黙な技術者は、今日も現場で機械と「対話」する。
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